カテゴリー: 〇〇に乗りたくて

  • 「あをによし」に乗りたくて… 

    「あをによし」に乗りたくて… 

    近畿日本鉄道 「あをによし」

    乗り鉄は、列車に乗るだけで幸福を得る生き物である。乗ることが目的で、降りてしまったらその先何をすればよいのかと考え込んでしまうのが私だ。
    また列車に乗り続けるばかりで本当にいいのか…
    何だかもったいないと思えて、たまに苦し紛れで旅の計画を立ててしまう時がある…

    今回の投稿は、観光が二の次になりがちな私なりの小旅行について書いてみることにする。


    近鉄奈良 17:37 ⇒ 大阪難波 18:16 「観光特急あをによし」

    地下ホームに列車が入線する際の轟音が聞こえたそばから、私はスマホのカメラを向け、列車と正対する。「あをによし」に乗る外国人たちも続々とカメラを向けてゆく。紫と茶色の中間のような塗装を何色といえばよいか。正確にはわからないのだが、艶っぽいという表現が適格だと思う。明らかに他の列車とは趣の違う様子に、ホームにいる人みな振り向いたのではないだろうか。

    近鉄の特急列車のなかで割と最近デビューした列車であるが、車両自体は年代物で、「スナックカー」という名車両を改造したものらしい。らしいというのは、あまり細かいことは詳しくないからだ。行先方向幕がLED表示でないことに驚く。旧式の幕のままではないか。あえて残してあるのだと思いたい。
    早速乗車する。

    窓に沿って2人がけの席が並んでいて、進行方向右手(写真の左側)は窓に向くように配置されている。この列車は基本的にツインシートとなっていて、一部4人席もある。内装には原色を使っておらず、自然界に存在するような淡い色を用いることで、古都の高貴なイメージを演出している。テーブルについている照明の青が妖しく光っているのが良い。シートはリクライニングしないのだが、沈み込むようなクッション性があり、乗り疲れしにくいと思う。耳元の覆いがあることで、個室「感」が出て、特別な列車に乗っているんだという気持ちになれる。

    「あをによし」は大阪~京都を奈良経由で結ぶ近鉄の観光特急。大阪~奈良間は1日1往復のみだが、奈良~京都間は4往復する。乗車した便は京都始発で奈良を経由し大阪難波を目指す本日の最終便である。

    車窓で注目したいのは2か所。まずは、近鉄奈良駅を出ると、平城京の遺跡内を走行する。両側の窓から復元された門や建物が見え、それ以外に何もない空間が広がる様子は、奈良を代表する車窓である。

    次に、生駒山を抜けた先の大阪平野の景色だ。生駒駅を発車するとすぐに生駒山地を貫くトンネルに入る。長いトンネルを抜けるとすぐに高台から見下ろすように大阪の街が一望できる区間を走るようになる。個人的に近鉄で最も景色の良い車窓だと思っていて、大好きな車窓だ。近鉄奈良線を作る際に生駒山地をぶち抜くトンネルを作ることになったのだが、最小限の距離にとどめるために、大阪側を少し山を登るようにしたことで、この絶景区間が生まれたそうだ。
    これらの車窓が望めるように、進行方向右手のみが座席を窓側に向けているのだと思う。

    乗車時間はわずかの39分。大阪難波駅に到着した。広いテーブルを使いきれなかったことが悔やまれるが、満足の39分だった。難波駅は通勤列車を待つ人ばかりで、「あをによし」を見る人はそんなにいなかった。早く帰る列車が来ないか待っているだけだった。観光モードが場違いな気がして、そそくさとホームを後にした。


    「あをによし」を乗る目的は達成されたが、何となくで観光もしたので記録する。

    三輪そうめんを食べてみた。日本最古の神社と言われる大神神社がある三輪で名物の名物だ。前回奈良を訪れたとき、奈良公園近くのバスターミナルで試食を配っていたので食してみたら、とてもおいしかったのを覚えていた。現地で食したいと思い、専門店で食べてみた。流しそうめんが食べられるお店だったが、気温が低かったので、にゅうめんを注文。やっぱりおいしい。よかった。

    唐招提寺にも行ってみた。奈良の世界遺産でまだ訪れたことがなかった。歴史の教科書に出てくる鑑真が建てたお寺だ。鑑真の御廟には新しい苔が生えていた。まるで自ら光を放つがごとく輝いて見えた。

    なんだかんだでうまくハマったかも。天気が良ければ最高だったが。奈良は何回も訪れているところだが、まだまだ行ってないところってある。乗り鉄をしているとそう思わされることが何度もあった。
    また、乗りたい列車に引っ張られて旅をするんだろう。